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翠渓会中日本圏本部・北陸支部支部釣行【第八陣】3

翠渓会中日本圏本部・北陸支部支部釣行【第八陣】3 1

翠渓会中日本圏本部・北陸支部支部釣行【第八陣】3


『越前の秘渓・翠聖帝谿へ』

「翠聖帝谿の出口を確保せよ!幻の尺七寸巨大イワナ黒色潜艦岩魚を確認!」


《岩盤に囲まれた∨字谿を脱出》



我々は黒色潜艦岩魚を確認した事に興奮しきっていた。それから直ぐ遡行を開始し滝を高巻いて降りた先を見て唖然!「スノーブリッジだ!」しまった!高巻きしている時は見えなかったが…まさか降り口には戻れない!「絶体絶命」とはこの事か。われわれは未知の谿に囚われの身となり、半遭難?状態に陥った。まずは食量を確認、ビバーク分しかない。まずは天候が心配だ。二人とも元気だが、不安は隠せない。翠剣殿も岩登りをして来た人間だ。穂高や谷川一の倉などを夜間登攀した事もある。ビバークか強行突破か?すると翠剣殿は「俺が見てくる!」と頼もしく空身でザイルを持ちスノーブリッジの対岸を登り始めた。この時期スノーブリッジが危険なのは私にもよくわかる。ふと私の脳裏に以前、苗場山で道を外し知らない谷間に降りてしまった時の事を思い出していた…。今は登攀能力の高い翠剣殿を尾根まで見送るしかない。30分位かかり漸く尾根の先に着いた様だ。手で○と大きく合図して見せている。無理な場合は×。ビバークはTの字としていたが。行けそうらしい。ザイルを降ろせる所まで二人の荷物を持って行く。まず荷揚げする。ザイルを片手に慣れた手つきだ。そして目視30M、70度はありそうな凸凹急斜面にザイルを降ろしはい上がる。ザイルが無い登りは、翠剣殿は時間を掛けここ避けて登ったが足掛かりが有る最短コースだ。ザイルが足りないから迂回はできない。慎重に登り詰め漸くコブにはい上がった。
谿を見て「いや〜まるで桶の底だね」翠剣殿に言われ谿底を見ると岩盤に囲まれた∨字谿だった。安心と恐怖感とが交差する瞬間だった。北陸の谿をあまくみてはいけない。未知の谿だからこそ巨大岩魚に遇えたが、一歩間違えれば「遭難」だ。この谿は地図でしか把握してない、救助などで場所を特定する事は困難だろう。やはりあの黒色潜艦岩魚のいる深淵が魚止めか?スノーブリッジに遮られ奥は見えなかった。短い巻きを下り、深淵の見える斜面に戻れた。ここからは一旦急斜面を斜めにトラバースして山越えルートを辿り返す。尾根には登山道は無いが踏跡か獣道くらいはあるだろう。下りは約二時間。意外と足取りも重く、手間取ったが漸く渓口に辿り着いた。巨大岩魚に関しては二度目の敗退となった。来年もこれるだろうか‥?下山すると翠聖帝谿を隠すように深い濃霧となり、我々を谿から追い出すように静かに雨が降り始めた…。



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